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INTERVIEW

映画『悪い夏』が3月20日(木)より公開

北村匠海×河合優実
若き奇才たちの「深淵」

映画『悪い夏』で共演した北村匠海さんと河合優実さん。特異な存在感で私たちを惹きつけてやまないおふたりにお互いの印象や今気になるトピックを教えてもらいました。

T = TAKUMI K ITAMURA
Y = YUUMI KAWAI

(keyword #01)

深淵

その眼差しで作品の奥深くへと誘うおふたりが最近じっくりと考えたこととは。

T 僕はもうずっとなにかを深く考えていて、思考が止まらないんですよね。たとえば石油ってあと何年でなくなっちゃうのかなとか、石油がなくなったらどうするんだろうとか、小難しいことばっかり考え続けちゃうんですよね(笑)。
Y 私も考えることは結構ありますね。最近だと、映画を作る時のお金の仕組みについて、映画を作る人たちが育つ学校についてとか。私は大学で演劇学科に行っていましたが、どの芸術分野も教育の環境は課題だと思うので、たとえばですが、そういうことは考えますね。 
T
わかる。僕もそういう話はよく磯村勇斗としていて、僕たちの前には小栗(旬)さんたちの世代も考えていたりして。これも考え出すと止まらないですね。

(keyword #02)

感心

思わず感情を高ぶらせてしまうほどに今、夢中になっていること。

Y『あいの里(』恋愛リアリティショー)です。
T 感情を出すのは、やっぱりリアルなものに限りますね。恋愛リアリティショーもいろいろありますもんね。
Y 今まであまり観てこなかったけど、感情移入してしまうものですね。なんであんなに涙が出ちゃうんだろう? みんな一生懸命だし、本当の気持ちだからなんですかね。

(keyword #03)

探求

もっと深堀りしたくなる、おふたりにとってホットなトピックは?

T 最近、圧力鍋に手を出してしまったんですよ。今までは煮込むなら時間をかけたいタイプだったんですけど、圧力鍋だと8時間かけていたものが30分でできちゃって。この前おでんを作ったら、大根もすぐにほくほくになりましたね。
Y いいですね。
T ただ、ちくわぶを入れると、圧力でボールになっちゃうので気をつけてください(笑)。
Y 私は今まであんまり連続ドラマを観てこなかったんですけど、『あいの里』から次のエピソードが楽しみという感覚にハマっちゃって。最近だと『私のトナカイちゃん』を観て、ストーカーという題材に収まらない展開に驚かされましたね。次はなにを観ようか、最近は常に探しています。

(keyword #04)

弱点

自分で「ちょっと悪いところだな」と思う愛らしい、おふたりの弱点とは。

T 朝起きられないのは悪いところですね。なぜかピンポンの音では跳ね起きる体なんですけど、非常に朝は苦手です。起こしてくれるマネージャーさんには本当に感謝しています。
Y 私は熱しやすく冷めやすいところがあって、すごくハマると一日中それをやってしまうところかなと思います。それこそ『あいの里』を8時間観続けたり(笑)。今この瞬間、というのに熱中してしまって、ほかのことが手に付かないのですが、このお仕事では短期的な集中力が強みにもなるので、そう捉えるようにしています。

「あのときは悪かっただけ」、
だから笑えるのかも。

 映画『悪い夏』で破滅への階段を転がり落ちる守と愛美のひと夏を、いちばん近くで見守った北村さんと河合さん。
T 守はただ生きるために働いていたけど、愛美と出会い、理性が壊れ、恋愛していく。その人生の浮き沈みに対してなにも構えず、純粋に感じることを意識しました。そのうえで限りなく彼が可哀想に、不憫に見えることがこの作品としてはいいのかなと思ったんです。
Y この作品で描かれている中で、愛美が自分でなにかを選んでいるシーンがかなり少なくて。そうやって、いわば流されてきた人が、唯一自分で動いたのは最後のシーンだけなんです。この物語では成長するところまで行けないけど、このあと自分で人生を選んでいってくれたらうれしいなと思います。
  
 役者として最前線を走るおふたりが初共演することも話題を集めている。

T 愛美がまとう儚く憂いのある空気は河合さんだから出るんだろうなと。守は好意があるからこそ距離感を難しく考えていて、最初のほうは愛美のことを見られなくて、愛美の娘・美空に助けを求めたりして(笑)。僕らふたりもそこまで言葉を交わしていなかったからこそ、空気や目線、指先で感じる
ことが多かったなと思います。
Y 北村さんは好きなものをたくさん持っていて、お芝居や映画に対して愛があるところも素晴らしいんですけど、すごくいいなと思ったのは北村さんのイメージからかけ離れた佐々木守になっていたことで。世間の共通認識がある方だからこそ、びっくりさせられると思うし、肌の質感とか生きていた
ら出る匂いみたいなものを、みなさんから感じられたので、すごくいいキャストのバランスだなと思いました。
  
 生活保護の不正受給、シングルマザー、困窮。作中で描かれる転落のきっかけは、どれも私たちに身近なこと。
Y 闇バイトのニュースを見ていると、こんなはずじゃなかったのにとんでもないことに加担してしまったという現実が近すぎて憂うつになります。個人の中の悪だけが原因だとは思えないし、愛美が事件に巻きこまれたのも突発的で、私はクズだとは思わなくて。ただできることをしてきた結果、八方
塞がりになったと思うんです。
T 原作の染井(為人)先生が撮影前に「登場人物たちにとっては、あのときは悪かったなと思うひと夏だっただけ」とおっしゃっていて、だからこの作品はちょっと笑えるのかなと思うんです。日常って選択の連続で間違ってしまうこともあって、大事なのはそこからどうするのかなんだと思います。


PROFILE

北村匠海

きたむら・たくみ 1997年11月3日生まれ、東京都出身。『君の膵臓をたべたい』『東京リベンジャーズ』
などの話題作に出演し、短編映画『世界征服やめた』では監督デビューを遂げた。DISH//のメンバーとしても活躍中。

河合優実

かわい・ゆうみ 2000年12月19日生まれ、東京都出身。2019年に俳優デビューし、ドラマ『不適切にもほどがある!』で注目を集める。昨年は主演作『あんのこと』『ナミビアの砂漠』が大きな話題に。

INFORMATION

映画『悪い夏』

市役所の生活福祉課に務める佐々木(北村匠海)。同僚にまつわる噂の真相を確かめるためシングルマザーの愛美(河合優実)を訪ねる。その出会いが地獄のはじまりだった……。原作は第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞の同名小説。
 
●監督:城定秀夫 ●原作:染井為人『悪い夏』(角川文庫/ KADOKAWA 刊) ●脚本:向井康介 ● 音楽:遠藤浩二 ●出演:北村匠海、河合優実、窪田正孝ほか ● 配給:クロックワークス ●3月20日(木・祝)より全国公開


photographs_TAKASHI EHARA
styling_SHINYA TOKITA (for KITAMURA),
MAYU TAKAHASHI(for KAWAI)
hair & make-up_KOHEI NAKASHIMA,
HARUKA FUJIMURA[UNVICIOUS] ( for KITAMURA),
YUKO AIKA[W](for KAWAI)
interview_SONOKO TOKAIRIN