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INTERVIEW

日本から世界へ、飛躍を続ける彼が今思うこと

坂口健太郎の“ さよなら”から始まる話

世界からの注目度も高いNetflixシリーズの最新作『さよならのつづき』で、有村架純さんとともにW主演を務めた坂口健太郎さん。切なくも美しい奇跡を描いたラブストーリーを演じています。今回は、2つのキーワード「運命」と「別れ」から、坂口さんの思考をひもときました。

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DESTINY

大遅刻した『メンノン』オーディション

「あのとき、もし間に合っていなかったら……」と思わずにはいられない、坂口さんの人生の転機となった、運命の日を振り返る。

「今の業界に入るきっかけとなった、『MEN'S NON-NO』のオーディション。実はオーディション開催の日に、会場のビルを間違えてしまって(笑)。警備の方に教えてもらって急いで正しいビルに向かったんですけど、僕の順番はとうに過ぎていて、もう最後の人だったんです。もはやアウトレベルの遅刻でしたが、そのときに滑り込みでオーディションを受けられたことは、間違いなく人生の転機となりました。当時は今の未来を想像もしてなかったし、ここに至るまで失敗したこともたくさんありますけど、今の僕があるのはその経験があったからこそだと思います。これまでの人生の中でいちばんつらかったのはいつだったかを振り返ると、中学の3年間。バレー部のコーチの指導が厳しすぎて、大人になってからもそれ以上にしんどさを感じたことはありません(笑)」

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FAREWELL

毎回、出演作と“さよなら”しています

今回の主演作である、恋人たちの“さよなら”から始まるラブストーリーに絡めて、坂口さんが最近“さよなら”したものとは?

「舞台挨拶や取材で、「この作品を通してどんなことを届けたいですか?」という質問をしていただくことがあるんですけど、いつも回答に悩んでしまって。作品の受け止め方は、100人いたら100人それぞれの答えが生まれるだろうし、これまでの人生観を含めて感じるものがあると思うので、まず僕が言葉にしてしまうことでその道のりを先につくりたくないなって思うんです。作品が公開されてみなさんに見てもらった瞬間に、僕のもとから“さよなら”……というより“巣立っていく”という表現が近いかもしれませんが、毎回出演作が公開されるたびに子どもを見送っているような感覚になります。先日配信がスタートした『さよならのつづき』は、だれにでも訪れる“最愛の人との別れ”がテーマ。どんなことを感じたか、みなさんからの感想が楽しみです」


INTERVIEW
ラブストーリー の新たな金字塔

人を愛するとはどういうことか―。思いもよらない運命が待ち受けていた心情を演じ切った坂口さんにインタビュー。

“雄介”と“成瀬”、ふたりの揺れ動く感情の表現に注目

 恋人の雄介(生田斗真)を事故で失うさえ子(有村架純)の、衝撃的なシーンから話が展開していく今話題のNetflixシリーズ『さよならのつづき』。坂口健太郎さんは、雄介の心臓を提供され命を救われる成瀬役を演じる。心臓の移植を経て、導かれるようにさえ子と出会い、お互いに惹かれあっていくさえ子と成瀬だが、自分の中に新たに芽生えた〝雄介〞の心と、雄介とは対照的なキャラクターである成瀬との、ふたりの感情のグラデーションの表現にはたくさん悩んだのだとか。

「ある程度ストーリーができたときに台本を読んで、〝この難しい役柄がはたして僕にできるだろうか〞と思ったのが正直な印象でした。成瀬は、〝雄介の心臓がさえ子を求めて反応している〞と感じながらも、さえ子と会う回数が増えるごとに、どこか成瀬自身もさえ子に心を動かされていたと思うんです。自分の中に生まれた、ふたりの感情の揺れ動きを表現するのにはすごく苦労しました。現場でも、監督と〝このシーンは雄介を何パーセントくらい、成瀬の心はどれくらい残したほうがいいですか?〞ってたくさん会話をしましたが、正解のない表現なので感覚で演じてみるしかないんですよね。僕は撮影現場で〝こういうパターンでもう1回やらせてください〞って言うことはあまりないんですが、今回はカットがかかった後にもいろんなパターンを撮らせてもらい、とにかくみんなでたくさん悩みました。今でも正解はわかりませんが、いろんな正解がある中で、みんなで成瀬の人物像をつくり上げていきました」

 ひたむきに愛し愛された記憶は、必ずその人の人生を支えてくれる。そんな〝さよなら〞から始まる新しい物語のW主演は、坂口さんにとっても心強い存在である、数々の作品で共演をしてきた有村架純さん。

「人を愛することってなんだろうという正解のない答えを探すために、架純ちゃんとは、もし自分の愛した人が亡くなったとしたらどう? っていう話や、恋愛の話……自分たちがこれまで生きてきた約30年の歴史に照らし合わせて、とにかくいろんな話をしました。複雑な感情を持っている中でも、強気で無邪気で、チャーミングなさえ子に、僕も気持ちが動かされることがたくさんありました。先日ふたりで取材をしていただく機会があったんですが、架純ちゃんが〝健ちゃんは、ポジションや立場関係なく、いろんな人を巻き込んで話をしてくれるから、すごくいい空気の中で撮影できる〞って言ってくれたんですけど、僕からすると、架純ちゃんが旗を振ってくれているおかげで、みんなが彼女のために動こうとしてくれているのでいい現場になったと思っています。架純ちゃんは現場でもずっとミューズ的存在でした」


PROFILE

坂口健太郎

1991年、東京都生まれ。2014年に俳優デビュー後、映画『64-ロクヨン- 前編 / 後編』(16年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)や『Dr.チョコレート』(23年)、Coupang Play『愛のあとにくるもの』(24年)など数々のドラマ作品に出演。近年の映画出演作には『余命10年』(22年)、『サイド バイ サイド 隣にいる人』(23年)など。

INFORMATION

Netflixシリーズ『さよならのつづき』Netflixにて独占配信中

恋人の雄介(生田斗真)を、プロポーズされたその日に事故で亡くしたさえ子(有村架純)。その雄介の心臓を提供され、命を救われた成瀬(坂口健太郎)。“さよなら”から始まり、どこにたどり着くのか……小樽、ハワイの壮大な風景を舞台に、運命に翻弄される美しくも切ないラブストーリー。


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styling_TAICHI SUMURA [COZEN ing]
hair & make-up_RUMI HIROSE

※SPRiNG2025年1月号掲載の記事を再編集したものです
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