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COVER STORY

2024 DECEMBER COVER ISSUE

吉岡里帆と共鳴する
クラフツマンシップ

突き詰められた情熱を感じるものに出会ったとき、私たちの心は躍ります。そんなプロだけがなせる業を備えている俳優・吉岡里帆さんに、細部までのこだわりが詰まった、メゾンを象徴するアイテムを着こなしてもらいました。

brand #01

LOEWE

[ロエベ]

複雑な作りでクラフトに富んでいるにもかかわらず、その熟練の技術を見せびらかしていない“大胆な微妙さ”を効果的に表現したという今回のコレクション。着る人の個性を引き立てつつも、さりげない〈ロエベ〉のこだわりを堪能して。

トップス(ベルト付き)¥229,900、バッグ¥1,030,700、ピアス¥108,900、ゴールドリング¥79,200、シルバーリング¥83,600(すべてLOEWE/ロエベ ジャパン クライアントサービス)
 

brand #02

GUCCI

[グッチ]

急ぐことなくレンガで家を建てるように、目に見える形で積み上げて階層化するプロセスを大切にするサバト・デ・サルノが今回表現したのは“夢の描き方”。シグネチャーモチーフで飾られた新作バッグがルックを仕上げるキーアイテムに。

アウター¥528,000、バッグ¥748,000、靴¥349,800(すべてGUCCI/グッチ クライアントサービス)
 

brand #03

BOTTEGA VENETA

[ボッテガ・ヴェネタ]

写真のアイコンバッグ[カバ]は熟練した職人を必要とし、ひとつを完成させるのに約2日間かかるというまさにクラフツマンシップが光る名品。世代を超えて持続的に愛用してほしいというブランドの信念が伝わってくる。

トップス¥212,300、スカート¥730,400、イヤリング¥220,000、リング¥115,500、バッグ¥2,062,500、靴¥198,000(すべてBottega Veneta/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)※バッグは、11/28(木)オープンのボッテガ・ヴェネタ麻布台ヒルズ限定アイテムです。
 

brand #04

CELINE

[セリーヌ]

〈セリーヌ〉の黄金期、60年代を振り返ることでメゾンの原点を蘇らせ、クラシックに回帰したという今シーズン。まさにそのころを彷彿とさせる、丈が短くコンパクトなシルエットや、フェルトハットなどのレトロなディテールが、フレッシュな装いに昇華されている。

ジャケット¥605,000、トップス(参考商品)、帽子¥132,000、サングラス¥77,000、ピアス¥61,600、リング¥69,300(すべてCELINE BY HEDI SLIMANE/セリーヌ ジャパン)※すべて予定価格です。
 

大きすぎるリボンに心がときめくミニドレスには、創業者のセリーヌ・ヴィピアナが生み出した「トリオンフ」が象徴的にあしらわれているパテントカーフスキンのバッグをあわせて。

ワンピース¥500,500、バッグ¥583,000、ピアス¥61,600(すべてCELINE BY HEDISLIMANE/セリーヌ ジャパン)※すべて予定価格です。
 


COVER INTERVIEW
with
RIHO YOSHIOKA

たゆまぬ努力と探究心を積み重ねて磨き続ける
その先に宿るクラフツマンシップに出会いたくて

自然に世界観へと導かれるパワーに満ちたコレクション

 各メゾンの最新ルックを身にまとい、カメラの前に立つ。その世界観に染まりつつも、培ってきた表現力でファッションの強い存在感に対峙する吉岡里帆さんがいた。脈々と受け継がれてきたクラフツマンシップを享受し、心に残った着こなしを振り返る。

「ロエベのコートは、中に着ているワンピースとおそろいの花柄になっていて、とても華やかで見ているだけでテンションが上がりました。ボア素材×花柄の異色の組み合わせは見たことがなかったです。総ビーズのバッグは繊細な手仕事が美しくて、まるでアートでした。実用として使うのは申し訳ないほどのクオリティ。着用した白シャツは、一見シンプルながらブラウジングができるデザインで、日常でも着たいと思える一着でした。グッチのミニボトムとニーハイブーツのコーデも私にとってはチャレンジで、服だけ見たときは着こなせるのだろうか?とちょっと心配だったのですが、着てみると計算し尽くされたバランスに感動。トップスの襟にクリスタルがちりばめられた繊細なデザインも気分が高まります。お仕事でも、ボッテガ・ヴェネタやグッチはよく着用させてもらっていることもあって、ちょっとクールな印象のあるスタイルが等身大の自分にもしっくりくる印象があります。ボッテガの花びらのようなデザインのスカートは、動いたときの裾の可愛さをどうしてもお伝えしたくて、撮影はめちゃくちゃ苦戦しました(笑)。最後のセリーヌは、オールホワイトの隙のないビジュアルに誘導されていくようなイメージ。トータルコーディネイトであえてその世界観に飛び込んでみるのも、こういったブランドを着るおもしろさのひとつかもしれません」

 髪をバッサリと切った。仕事がきっかけではあったものの、普段のファッションにも想像以上の変化が訪れたそう。

「髪が長かったころは、衣装ひとつにしてもフェミニンだったりキュートな印象のものが多かったので、プライベートではボーイッシュだったり辛口なテイストを選んで、自分らしくバランスを取っていた部分がありました。それは仕事で着る服を新鮮に楽しめるようにする工夫でもあって、ある意味で自分を立ち上げるためにも役立っていたんですが、髪型が変わったことでファッションの楽しみ方やバランスの取り方、似合うアイテムも変化してきたなと感じています。今の髪型だと、首元が詰まっているトップスが似合うみたいで、ニット素材のポロシャツとか、学生っぽさのあるプレッピーなスタイルがこの秋冬は気になってるんです。大人っぽく着こなせたらうれしいですね。久しぶりにがっつりお買い物をしたい気分です」

プロの謙遜と自信、こだわりにいつも心を動かされてきた

 クラフツマンシップとは、職人の技巧、職人芸といった意味合いがある。ファッションに限らず、エンタメの世界でももちろんそれは健在で、各部門のプロフェッショナルが集って、ひとつの作品をつくり上げていく。

「ゾゾタウンのCM撮影をしたときに、ファッションが好きな女のコの部屋を美術さんがつくってくださったんですが、画角には映らないところまでこだわりが行き届いた部屋になっていて、細部にまで至る作り込みにすごく感動しました。『可愛いですね!』と興奮して声をかけたら、『いえいえ』と謙遜しながらも、『すごくがんばりましたし、気に入ってます!』とご自身のお仕事を誇る姿がカッコよくて印象的でした。照明さんも、その日のメイクにあわせて、〝肌をもうちょっとナチュラルに見せたいけど難しいですよね?〞と相談すると、『あ、変えられますよー』と気軽かつドンピシャで対応してくださる。ヘアメイクさんやスタイリストさんが望む照明を即時につくり上げていく仕事ぶりは圧巻です。さらにいえば、みなさん気前がよくて、粋なんです。スタッフさんへのリスペクトは高まるばかりで、今回の撮影にしてもヘアメイク中山さんのお仕事もまさにクラフツマンシップ。私の短い髪って、アレンジが難しいはずなのに、ブランドのルックにあわせて雰囲気をガラッと変えてくださって。今日、はじめて見た服にあわせて即興で作り上げていて、ちゃんと私らしさがありながら、ヘアメイクさんやスタイリストさんの個性も加味されている。その絶妙なバランス感に毎回唸ってます。こうしてメディアに10年以上出させていただいていると、既視感のようなものが絶対にどこか出てしまうと思うんですが、私自身もなるべくなら常に新しくありたいですし、既視感を出さないように心がけているので、ヘアメイクさんやスタイリストさんは心強い味方。理想像があっても私ひとりの力ではなにもできないので、みなさんの力と卓越した技術や感性を借りながら、一緒に理想を追いかけている感覚があります」

自分へ向ける厳しさは、自分のための最強の愛情

 芸や技巧を磨き続けるその前には、必ず情熱や憧れの芽生えが宿るもの。それは、たゆまぬ努力を続ける燃料にもなっていく。

「それで思い出したのは、情熱大陸のナレーションをされている窪田等さんにお会いしたときのこと。番組に出演された方が魅力的に映り、その内面がより表に出てくるためには、ナレーションの力が凄まじく大きいなと感じていて。窪田さんは被写体に寄り添って、台本も細かくチェックされて収録に向かっているそう。人の心に残る番組や作品が、異次元なほどに細かな努力と工夫によって作り上げられていると知ってすごく感動したんです。さらに、自主的にYouTubeで朗読をアップされているとのことで、その理由を尋ねると、シンプルに好きなことだし、『もっとできることがあるんじゃないか?』と探究心が先に立つとのこと。あれだけのキャリアがありながら、自分に納得しないで、模索する姿勢に触れて、私も自分を磨いていかなければと感じました。ときには自分を甘やかしてあげることも大事だけれど、反対に自分に対して厳しく痛めつけられるのも自分だけ。それって最強の愛情だし、未来の自分に対する最高の投資でもあるなと思うんです」

技術も信頼もひたむきに積み重ねていくだけ

 吉岡さんにも、最近、初心に返る瞬間が訪れた。坂元裕二さんの脚本で、松たか子さんと久しぶりに共演する機会があった。

「坂元さん、松さんは、私を役者として立ち上げてくださったドラマ『カルテット』の脚本家さんと主演の方。オファーをいただいたからには報いねばとすごく緊張していたんです。もう7、8年ぶりの共演だったんですが、松さんがあの当時のことを鮮明に覚えてくださっていて、たくさんご迷惑をかけた分、その温かさに泣きそうになっちゃって。当日緊張しすぎてスタジオの隅で影のごとく固まっていた私に、差し入れのどら焼きを『よかったら食べない?』と声をかけてくださったこと、なのに恐縮しすぎて『大丈夫です』と気遣いを断ってしまったことが、走馬灯のように蘇ってきて(汗)。当時の松さんも、今の松さんもやっぱりやさしくて、懐が深くて、こんな人になりたいなって改めて感じました。きっと松さんはだれに対しても、長年同じ姿勢で向き合うことを積み重ねている。その美しさやかっこよさもクラフツマンシップ。技術や技術に対する信頼は一朝一夕ではできないし、積み重ねてきた人のみが作品として残せたり、仕事として発揮できることだと思うので、職人技だねって言われるところまでは私も役者を続けたい」

 また、役者として、うれしい言葉をもらったという。公開を控える映画『正体』でのエピソードだ。

「監督の藤井(道人)さんに、はじめてお会いしたときに『オレら側の人じゃん』って。実際に、会って話す前までは、遠慮があったそうですが、タフで、厳しいオーダーをしてもきっとついてきてくれると思ったと、率直にいってくださって。本音でぶつかってもいい相手だと思ってもらえたのがすごくうれしかったです。お互いに遠慮したり、遠慮されたままではいい作品にはたどりつけないですから」

コート(ベルト付き)¥459,800、ワンピース¥393,800、靴¥163,900(すべてLOEWE/ロエベ ジャパン クライアントサービス)


PROFILE

吉岡里帆

1993年1月15日生まれ。京都府出身。近作に、映画『怪物の木こり』、ドラマ『時をかけるな、恋人たち』、Netflixドラマ『忍びの家 House of Ninjas』など多数。現在、吹き替えを担当した映画『トランスフォーマー/ONE』(エリータ-1役)、映画『まる』が公開中。今後、能登演劇堂 舞台劇「まつとおね」(2025年3月)の上演を控える。

INFORMATION

映画『正体』

染井為人による小説「正体」を、映画『余命10年』『青春18×2 君へと続く道』の藤井道人監督が映画化。一家惨殺で死刑判決を受けた少年死刑囚・鏑木慶一(横浜流星)が脱獄を図り、1年以上に及ぶ逃亡劇を描く。11月29日公開。


model_RIHO YOSHIOKA
photographs_SASUTEI[RETUNE REP]
styling_AYA ISHIDA
hair & make-up_TOMOE NAKAYAMA
interview_HAZUKI NAGAMINE

※SPRiNG2024年12月号掲載の記事を再編集したものです
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