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INTERVIEW

妻夫木 聡 × 広瀬すず
滾る衝動が示す
ふたりの現在地

日本映画界をけん引する俳優・妻夫木 聡さんと広瀬すずさん。そんなおふたりが仕事をするうえでの原動力や、最近心を動かされ、熱くなったこと、そして共演作である映画『宝島』についてもお話を聞きました。

役者として、少しだけ嫉妬しました

映画『国宝』を観たんです。やっぱり李相日はすごいなと思いました。
そして吉沢 亮さんがすごくよかった。『全身全霊を尽くした』という言葉の通り、
彼の覚悟を感じました。役者として少し嫉妬するくらいでしたね。

英語はわからないのに、
全部が伝わってきた

お仕事でニューヨークに行った時に、ブロードウェイで『ヘルズ・キッチン』を観たんです。
時差ボケしていたし、英語はまったくわからないのに全部が伝わってきて。
言葉ではうまく言えないんですけど、
「うわー! 最高の夜だ!」と思いましたね。

【役者の矜持】

穏やかで深い海のようなその瞳が、熱く燃える理由はどこにあるのか。演技という仕事を続けるうえでのエネルギー源、原動力を教えてもらった。
  

T=Tsumabuki Satoshi
H=Hirose Suzu
  

T 原動力は家族だと思う。守るべきものがあって、その人たちのために生きていくみたいな意味が強くなって、芝居が好きだからやりたいということだけじゃなくなってきて。じゃあ結婚する前はなんだったかと言われたら……正直覚えてないな(笑)。芝居を好きな気持ちだけでやれていたのかな。でも好きじゃなきゃあんなに苦しいこと、できないよね(笑)。
H 使命感だけじゃできないです(笑)。
T じゃあ、すずちゃんの原動力は何?
H 私はすぐ芸能界を辞めると思っていたので辞めどきを失っちゃって(笑)、ただ負けず嫌いだから「なんか負けたくない」という気持ちはありました。年齢を重ねていくと、妻夫木さんのような先輩方がいてくださって、お話を聞くと「私もやらなきゃ」「自分はまだ浅いところにいるな」という思考になって、そう思う時点でお芝居や今やっていることが好きなんだろうなと思います。今は守るものがないからこそ、ある意味何も考えずに、その瞬間瞬間で自由に感情が動いています。
T 僕も後輩から刺激を受けることはいっぱいありますね。芝居がうまい人だらけだし、みんな器用で、自分がどうありたいかという意見も持っていて。若い役者さんに「どうやったら売れますかね」と聞かれたことがあるんですけど、直球ですごいなと思いましたね。でも僕は「芝居がうまくなるのがいちばんの近道じゃないの?」としか言えないからさ。売れる方法がわかっていたらプロダクションやるよ(笑)。
H 社長! 私も入ります(笑)!

【滾る衝動】

心を動かされ衝動的に買ってしまったもの、買いたいものを聞くと、おふたりから意外な回答が。そのやりとりからはおふたりの関係性も垣間見えました。

T 急に資格を取るのに興味が出ちゃって、夜中にひとりでお酒を飲みながら3つくらいのテキストを頼んじゃいました。でも勉強する時間がなくて、まだひとつしかできていないんですけど(笑)。
H すごい。一個はやったんですね。
T ひとつは、僕は字が汚いのでペン字講座、あとは自分と役の感情をコントロールするためにメンタル系の講座にしたんですけど、片方は思っていたのと違ったので置いておいて(笑)、もうひとつのマインドフルネス系の講座は、心を無にして芝居に役立てられればいいなと思っています。
H 私はこの前友達と飲んでいるときにバスタオルを買ったと聞いて、最後に買ったのっていつだろう?と考えたら、今持っているのはもう7年くらい使っていて(笑)。何にも気持ちよくないし、ふわふわもしてないし、だけど全然使えるんですよ。
T わかるわかる、使っちゃう。
H 実家でもコロコロ変わっている感じではなかったから、じゃあいつ変えるんだろう?と思って、とりあえずその場で通販のカートに入れたんです。
T きっとまた長年変えないんだから、いいやつにしなよ(笑)。
H たしかに(笑)。でもかわいいし、3枚セットで4000~5000円くらいするんですよ。まだカートに入っているんですけど。
T 何年も使うんだよ(笑)! 
H じゃあもうちょっといいものを買おうと思います(笑)。

映画『宝島』の熱

物語が持つパワーはもちろん、キャスト・スタッフの熱意がスクリーンからあふれるように伝わってくる今作で妻夫木さんと広瀬さんが描き出した関係性、そしてお互いに感じた信頼感とは。
 
 
  アメリカ統治下にある沖縄で生きる若者たちの、20年という時間を映し出した『宝島』。二度の撮影延期を乗り越え、公開を迎えた。
T
 ものすごく労力がかかることは原作を読んで予想できていて、撮影が流れてしまったと聞いたときは「やっぱりそうなったか」って。二度目に流れたときはいよいよ無理かなと思ったんですけど、三度目の正直で動き出して、撮影するまでは信じられないところがありましたね。
H 撮影が延期された中でも改めてお声がけをいただけてうれしかったです。作品を観てやっと「本当に撮影できたんだ」と思えたくらい、完成したことが夢のようです。
 
 妻夫木さんは親友の行方を追うグスクを、広瀬さんは恋人を思い続けるヤマコを演じた。希望と怒り、やるせなさを抱きながら走り続けるグスクとヤマコの関係性は、おふたりの目にどう映ったのだろうか。今回が初共演だが、撮影が始まってすぐに距離は縮まった。思い出も色濃く残っている。
T 恋愛感情なのか、家族なのか、友人なのかわからないけど、好きだからそばにいるということでいいのかなって。グスクにとってはヤマコが幸せなら僕の幸せだという思いでいたし、すずちゃんもそう演じてくれていて、それも幸せの形のひとつなのかなと思いました。
H ニイニイ(グスク)はお兄ちゃんのような、戦友のような、家族のような、恋人であるオンちゃん(永山瑛太)への想いを埋めてくれるような存在でもあって。もうここにしか支えがないと思うような存在の仕方をしてくださるから心地よかったですし、ヤマコの「自分の足で生きていってやる」という男勝りな面は、ニイニイがいてくれたことが大きかった気がします。「この現場で松山千春さんが大流行りしたんだよね(笑)
  
演技の根底にはお互いへの信頼もあった。
H 
作品でがっつりご一緒したことはなかったですけど、妻夫木さんを見て育ってきていますし、ずっと近くにいるような気がする安心感があって。やわらかく、どこにでも自らフィットしにいく姿が印象的で、みんながついていこうと思える背中を見せていただきました。
T 
すずちゃんとはよく知っている監督や演出家が一緒で、いい意味で苦しみを一緒に乗り越えてきている気がするからこそ、なにも言わなくても通じ合えている部分もある気がして。今回は撮影をしたというよりも一緒に生きた感覚で、すごく助けられましたね。


PROFILE

妻夫木 聡

つまぶき・さとし 1980年12月13日生まれ、福岡県出身。1998年に俳優デビューし、2001年公開の初主演映画『ウォーターボーイズ』で注目を集める。その後、数々の話題作に出演し、『悪人』『ある男』では日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞。10月からは日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)で主演を務める。

広瀬すず

ひろせ・すず 1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年のデビュー後、『海街diary』『ちはやふる』などに出演し、確かな演技力で話題を集める。今年は『ゆきてかへらぬ』『片思い世界』『遠い山なみの光』と3本の主演映画が公開され、2026年には横浜流星とともに主演を務める映画『汝、星のごとく』が公開予定。


INFORMATION

映画『 宝島』

アメリカ統治下の沖縄で、米軍基地から奪った物資を住民らに分け与えていたグスク(妻夫木聡)たち。そんな彼らを引っ張っていたオン(永山瑛太)が突然消息を絶つ。その影を追いながらもそれぞれの道を歩み、時代に抗いながら生き抜く若者たちの姿を描く。
 
●原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫) ●監督・脚本:大友啓史 ●出演:妻夫木 聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太 ●配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ●全国公開中 https://www.takarajima-movie.jp/

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会


model_ SATOSHI TSUMABUKI, SUZU HIROSE
photographs_ KEISUKE KITAMURA
styling_ YASUHIRO TAKEHISA for TSUMABUKI,
AKIRA MARUYAMA for HIROSE
hair & make-up_ AZUSA OUE for TSUMABUKI,
MASAYOSHI OKUDAIRA for HIROSE
interview_ SONOKO TOKAIRIN

※SPRiNG2025年11月号掲載の記事を再編集したものです
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。