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高山都、もの語り
ひとりごと、
ふたりごと

先日発売された高山都さんの著書「高山都、もの語り ひとりごと、ふたりごと」より、心にグッと刺さった言葉をSPRiNG読者のみなさんに、少しだけピックアップしてご紹介。都さんの丁寧な暮らしから、人生を豊かにするヒントがきっと見つかるはず。

#001

そばかすと赤い口紅

コンプレックスのことを、私はチャーム(=個性)だと思うようにしている。歳を重ねるたびに、心は強くたくましくなってきた。おかげで、余計なお節介や多少の意地悪な言葉も気にならなくなった。努力することは忘れないが、美の価値観も人それぞれ。拭いきれない欠点はそれも個性と明るく開き直り、自分の好きなところを磨いて上手にカバーするようにした。太めの下半身は無理して出さなくてもいいし、隠しきれないそばかすは、つやつやの肌の上で存在させてあげたらいい。クヨクヨ気にするより、このチャームと、堂々と生きるのだ。そんな私に強い味方がある。赤い口紅だ。私のバッグやポーチの中には、だいたい2~3本の色味違いの赤の口紅が入っている。

#002

バトンする腕時計

私は12月27日、クリスマスのすぐ後に生まれたおかげで、誕生日、お正月と、祝いごとの距離が近い。年に一度のおねだりも、両親の懐具合を勝手に心配して、贈り物のリクエストは「素敵なひとつ」にまとめていた子供だった。そのせいか、12月には特別な思い入れがあり、大人になって好きなようにお金が使えるようになってからは、自分で自分へ、とびきりの「素敵なひとつ」を贈るようになった(ひとつじゃないことも多々あるが、12月に沢山理由をつけて贈っている)。一年の「お疲れさま」と「おめでとう」を両方伝えるプレゼントとして、年末のちょっと大きな買い物は、今年の自分を胴上げするような気持ちで臨む。そんな贈り物のひとつが腕時計だ。時計を身につけるようになった30歳くらいから、節目節目に少しずつ買い足している。そのほとんどがヴィンテージで、気づけば6本、自分の手元に集まった。人と同じで、少し傷ついたり、リペアされたり、「ものについての過去」があるのも味わいだし、リングなどと同じで、多少光沢が少ないほうが自分には落ち着くこともあり、ヴィンテージを選んできた。定番だけど、クセやエピソードがありシンプルで華やかすぎず、どんな格好にもシーンにも似合う。それがこの6本の共通点だ。

#003

同じものがふたつとない
ガラスたち

朝陽を気持ちよさそうに受けながらリビングに佇むガラス棚は、一緒に暮らして3年半が過ぎた。これは昭和初期のものをリペアし強度をあげて甦ったもので、富ヶ谷にあるDOUGUYAさんで出会った逸品だ。棚も含めて、美しいガラス製品たちが並ぶここは私の宝箱になっている。今まで、ガラスは割れやすく繊細だから、大雑把な自分には扱いが難しいだろうと避けていた。器を集めだしてからも、自宅用には扱いやすそうな土ものの、割れにくそうな欠けても気にならなさそうな陶器を中心に選び、いつかいつかとガラスは眺めるばかりだった。そんな私もいつ頃からだろうか……。すこし歪で個性のあるガラス製品たちを使い始めた。工業的に作られた正確で細やかな造形も素敵で憧れるが、どうやら私は誰かの手で作られたガラスが好きなようだ。


photographs_TATSURO YASUI
hair & make-up_YUKAKO MORINO[Perle]
text _MIYAKO TAKAYAMA
※SPRiNG2025年2月号掲載の記事を再編集したものです。商品は販売終了している場合がありますのでご了承ください
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